香港の行政長官、民意不在の船出 混乱続く可能性も – 朝日新聞

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 香港政府のトップである行政長官に、支持率が低迷している林鄭月娥(キャリー・ラム)氏(59)が当選した。中国の習近平(シーチンピン)指導部による「本命指名」が決め手となったが、世論の支持を得ていないリーダーが選ばれたことは、香港社会の分断や政治不信を広げかねない。民主派などは反発を強めており、混乱が続く可能性がある。

 26日午後、投開票が行われた香港会議展覧センター。得票数が読み上げられると、林鄭氏は表情を緩めた。何度も支持者らに頭を下げ、天を仰いで大きく息を吐いた。「長官として、中国政府に責任を負うとともに、香港市民にも責任を負う」。直後の会見でそう語り、過度に中国寄りとの批判払拭(ふっしょく)を狙った。

 習指導部は林鄭氏の当選を確実にするため、親中派候補の一本化を図った。親中派が多い財界とのパイプを持つ曽俊華(ジョン・ツァン)氏(65)が昨年12月に提出した財政官の辞表を1カ月以上、保留。曽氏の陣営関係者によると、曽氏に中国主導の国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)副総裁のポストまで提示し、出馬断念を迫っていたという。

 辞任承認を遅らせた動きをみて、香港の親中派の間では「中央は林鄭氏を推している」(閣議的な役割を果たす香港行政会議の葉国謙議員)との受け止めが急速に広がった。香港政治に詳しい外交筋によると、2月上旬には、中国共産党序列3位の張徳江(チャントーチアン)・全国人民代表大会(全人代)常務委員長が香港に隣接する深圳に親中派を集め、「林鄭氏は中央が唯一支持している候補だ」と非公式に伝えたとされる。投票2カ月近く前に「本命」を伝える異例の早さだったという。

 習指導部が「曽氏外し」をした背景には、学生が民主化を訴えた2014年のデモ「雨傘運動」や、香港独立の動きに対する危機感がある。雨傘運動当時、学生との対話で譲歩しなかった林鄭氏に対し、曽氏は学生側に理解を示すような発言をしたことが中国から外された要因だと香港政治の専門家は指摘する。

 最終的に曽氏は翻意せず、一本化は失敗。親中派は、民主派から支持を集めざるをえなくなった曽氏に「民主派の政治代理人」とレッテルを貼り、林鄭陣営の引き締めを強めた。

 だが、親中派が支援するほど、林鄭氏への市民の支持率は低下した。民意を反映していないとして社会が混乱し、経済に悪影響が出るのを避けたい財界からは「林鄭氏が勝てるかどうかはわからない」と投票直前まで警戒が消えなかった。

 当選後の会見でも、中国による選挙への関与と民主派との関係構築に質問が集中。林鄭氏は「言論の自由を守って、人権を尊重する」と宣言。「党派を問わずに新政権の幹部を登用したい」とアピールするなど配慮を強くにじませた。

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