フラッシュオーバーにより9名の消防士が殉職した大型家具店の火災について – リスク対策.com

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(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

7月1日から7月7日は、日本では中央労働災害防止協会が推進する全国安全週間。今回は消防現場活動における安全について、2007年6月18日にサウスカロライナ州チャールストンで発生した9名の消防士が殉職した倉庫併設型大型家具店の火災事例を例に考察してみた。

最初に、この火災で殉職した9名のご冥福を心からお祈りいたします。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)


(出典:「Charleston 9 Our Fallen Brothers」/YouTube)

■チャールストン ソファー スーパーストアの火災について(Wikipdia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Charleston_Sofa_Super_Store_fire

倉庫併設型大型家具店の怖さは、構造物の壁材と壁内、天井と屋根の間の保温素材、家具に使われている塗料や被覆素材から発生するさまざまな有毒性燃焼ガスのほか、様々な家具の燃焼による急激で継続的な温度上昇が原因で引き起こされる柱や屋根材の耐久性の低下など、動線が複雑で消防ホースの延長や消火も難しい。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

また、柱が少なく売り場面積が広いショールームや倉庫内での火災は、内容物の燃焼による熱で可燃物が熱分解し、引火性のガスが短時間で発生して室内に充満した場合や、天井の内装や家具商品などに使われている可燃性素材や塗料が輻射(ふくしゃ)熱などによって一気に発火するなど、フラッシュオーバーが起こりやすい。

倉庫併設型大型家具店の映像アーカイブを調べてみると、どれも燃焼の炎の勢いが極端に強く、延焼拡大も早い。水だけの消火よりも、大量の高発泡を使っての窒息&冷却消火の方が迅速な鎮火に導けそうな気がする。


(出典:「QIC Furniture Store Fire Imperial St. Burnaby BC Canada」/YouTube)


(出典:「MASSIVE FURNITURE STORE FIRE! 5th Alarm Fire NHRFR North Bergen, NJ」/YouTube)

■その他、倉庫併設型大型家具店の映像アーカイブ
https://www.youtube.com/results?search_query=furniture+store+fire

このサウスカロライナ州チャールストンで発生した倉庫併設型大型家具店の火災建物は、約4000平米(1200坪)のうち約1600平米(約500坪)は倉庫。日本の消火設備設置基準では、スプリンクラー設備を設置し、ヘッドも12個以上、屋内消火栓の設置基準も満たさなければならない対象物であるが、この倉庫併設型大型家具店は1950年代に建てられ、スプリンクラー設備もなかったという。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

推定発火時刻の午後7時は開店営業中で、従業員が倉庫エリアで火災を覚知し、午後7時8分に通報し、通報から2分後の午後7時10分に先着隊現着。

午後7時11分、後着隊により、建物外壁に接触する形で設置された梱包ゴミと、家具を輸送するときに使うクレートなどの廃材が燃えていることを確認。

午後7時13分、外部から内部への延焼状態を確認するため、ショールーム側に空気呼吸器を装備した消防士が進入したときには、ショールームと倉庫スペースの両方の天井部分に薄い煙が立ちこめる程度の状態だった。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

現場指揮者が建物の外から搬入口の外開きのドアを開けたとたん、ショールーム側へ新鮮な酸素が流入し、天井部分から大炎上。建物内が一気に負圧となって持てないほどの強い力でドアが閉まり、内部の消防士達が閉じ込められてしまった。

午後7時14分、搬入口外側の現場指揮者が炎上火災になったことを無線伝達。その後、後着隊の消防士達が次々とショールーム側から倉庫側建物に閉じ込められた仲間を助けようと建物内部に進入。

午後7時16分、内部進入&延焼阻止のため、消火ホースを延長するも後着隊の消防車により、延長したホースが破損し、十分に放水できない状態であった。非番日の消防士達も応援に駆けつけた。

午後7時20分、ポンプ車6台、梯子車1台、指揮車3台が集結するも消火活動が十分にできない状態。

午後7時26分、倉庫部分に閉じ込められた従業員が911通報し、助けを求めたため、後着隊の一隊が救助に向かう。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

午後7時29分、倉庫部分に閉じ込められた従業員を救出するため、外壁を破壊して建物内に進入した後着隊が無事に救助する。

午後7時31分、建物内で18分ほど人命検索活動を行っていた16名の消防士の空気呼吸器の残圧が、脱出しなければエア切れになる状態だった。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

午後7時32分、黒煙に包まれ、さまざまな家具の配置で迷路状になったショールームの中でエア切れになった消防士達は次々にメーデーを発信。無線で現場指揮者に奥さんに愛を伝えるよう頼む消防士、神に祈る消防士など、様々だった。中にはなんとか脱出を試みようとショールームのガラスを突き破って外に出ようとした消防士達も居たが、ガラスが厚すぎて破壊できなかった。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

次々に残圧が最低に近づき、外側からもガラスを破壊し、中の消防士達を助けようと試みたが、ガラスは割れず、無線の応答にも応えなくなった。そうこうするうちにどこからか大量の酸素が建物内に流入し、ショールーム側が大炎上した。

午後7時41分、大規模なフラッシュオーバーが起こり、数秒後、建物の屋根や柱などの内部構造物が倒壊したが、この時点でも水利が確保できて折らず、消火体制が取れていなかった。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

午後7時41分、ショールーム前面が崩れ落ち、ショールーム全体が高さ約9mの炎に覆われた。

午後10時00分、ようやく鎮火状態になり、2名の隊員の遺体を確認。

午後10時45分、市長のメディア発表で、他にも数名の消防隊員を確認できないことを告げた。

午後11時00分、さらに2名の隊員の遺体を発見。

午後11時15分、3名の隊員の遺体を発見。

午前4時00分、崩落した建物の下から、2名の隊員の遺体を発見。計9名の消防隊員が殉職した。

(出典:「Forged by Fire: A story of tragedy and transformation」/Vimeo)

下記は全米消防長協会が発表した、火災による殉職事故原因調査発表の映像。


Line-of-Duty Death and Injury Investigations – NIST Fire Modeling – The Charleston Investigation(出典:Youtube)

この火災の現場検証の中心になったポイントは:

・なぜ、9名の現場経験豊かな消防士達が火に閉じ込められてしまったのか?

・なぜ、建物内で延焼が拡大し、消防士達が気づかなかったのか?

・なぜ、急激な延焼拡大が起こり、メインショールームまで一気に火が広がったのか?

・どのような状況で、9名の消防士達が火に閉じ込められたのか?今後、予防するには何を行うべきなのか?

・構造物別の熱による変形の見分け方、酸素濃度、煙の対流、火災防御の手順

・消防設備は適正に設置され、使えるように整備されていたのか?


また、倉庫併設型大型家具店等、重量のある机や椅子、ソファー、ベッド、飾り棚などの数千もの商品がランダムに置かれている場所に対しての火災消防戦術で優先して考えておくこととして、下記のような内容が議論された。

・大型の火災対象物内で煙や熱を感知した場合、1隊1線1水利を必ず確保して進入しなければ、別方面から進入した他隊による開口部の開放によるフラッシュオーバーなどが発生したときに対応が間に合わず、身を守ることは難しい。

・フラッシュオーバーを予防するための開口部の開放手順と手法を研究する必要がある。特に炎が見えないが、薄い煙が立ちこめていたり、火災建物内の温度が高い場合、酸素濃度が低くなり、室内気圧も低くなっていることが考えられる。

・隊同士はもちろん、現場指揮所への無線による進入箇所の事前通知が必要。なお、進入箇所の名称(ファイアーグラウンド)は、実際の方角には関係なく、建物正面がA(アルファ)、左がB(ブラボー)、対面がC(チャーリー)、右がD(デルタ)とする。下記の写真は建物への進入方向と実際の方角を表したコンパス。

このコンパスを使うことで、濃煙の中、進入口を確認できたり、無線で指示された直近の脱出方向などを知ることができる。スクーバダイビングのコンパスも脱出の目安として使えると思う。

・1200坪の広大な売り場にランダムに並べられた重量のある家具は簡単には動かせず、消防活動上の動線の確保は難しい。ホース延長の際、抵抗になり、また、消火活動を極端に困難にし、また、キンクが発生する可能性も高く、水圧を十分に得られないため危険な状況になることが多い。火災の初期段階は40mm高圧ホースなど、キンクが少なく、取り回しのいいホースによる消火を素早く行うことは延焼拡大を防ぐ効果があるが延長が限られている。

・逃げ遅れ者がいないことが確認できた火災対象物は延焼防止を優先し、建物構造や可燃性内容物内部が発生する有毒ガスなどが明確でない場合は、進入は慎重に行い、消防士の危険リスクを最低限に抑えること。

・隊員相互の空気呼吸器の残圧管理は重要。隊員が倒れたり、建物の倒壊から要救助者を救出する時間を含めて退出時間は最低6分(残圧80?)を考えておくことが望ましい。進入のローテーションによる残圧管理を考えておくこと。ただし、出動隊と隊員数が少ない場合は、自己管理となるケースがほとんど。

・長く活動できるための呼吸法(アセントブリージング)を身につけておくこと。アセントブリージングとはスクーバダイビングで緊急浮上するときに水面まで空気をフッ、フッ、フッとゆっくりと肺の空気を出しながら、エアエンボリズムを予防するための呼気法。消防現場での空気呼吸器着装時にアセントブリージングを行うことで、活動時間は長くなる。

・ホースの色分けやホースタグ等を用いて、どの隊がどのホースを使ってどこで防御活動中なのか等を明確に把握することで、活動中の事故に対して、迅速に対応できる。

・建物構造によっては、無線が通じないこともあるため、無線以外の機関員とのコミュニケーション手段も常に準備しておくこと。現場の固定電話、隊員の携帯電話、手信号、または、隊員による直接伝達。

・殉職事故が起こった場合、また、悲惨な現場から脱出して助かった仲間の消防士達の惨事ストレスは相当なもので、起こったことをどのように受け入れ、そして、乗り越え、その後、継続的に消防士としての活動に惨事体験をどう具体的に反映させていくかなども課題となった。

・全米消防長協会による公式で科学的な火災事故検証と予防研究発表、そして、殉職した消防士家族を招待しての定期的な追悼式は非常に重要で、全米消防職員への志気向上や活動指針ともなり、また、惨事ストレスへの予防にも繋がった。また、一般的に公開することで、自衛消防隊やミリタリー関係、警察職員、防災関係者、大学研究者への教育・研究にも役だった。

・構造物の耐火基準、消防設備設置および維持基準、家具や事務机など、室内で使用される商品や塗料の難燃性、不燃性化など全体的な防火基準などの見直しが課題となった。

・消防士の部隊活動フォーメーションやコミュニケーション、構造物のサイズアップ訓練と現着から1分以内の放水準備体制、呼吸器着装箇所や火勢状況や要救助者の有無によって進入をするかしないかの判断、火災建物へ進入する箇所と退出口の判断、残圧管理による脱出開始判断などを具体的に徹底することも課題となった。

・セキュリティーグレードの厚い強化ガラスや防音効果・断熱効果の高い壁に閉じ込められた際、鳶口などでは破壊困難であるため、エンジンカッターによる排煙開口部、緊急脱出口や救出口の作成を考えておくこと。強化ガラス壁材メーカーの工場や研究所へ消防活動上の排煙や緊急脱出の研修、強化ガラス壁材の廃材を使って実技訓練も検討。


下のビデオはエンジンカッターによる強化ガラスへの開口部作成要領。

FireFighter Cuts Hurricane Glass Window Super FAST! – The Extractor Rescue Blade(出典:Youtube)

いかがでしたか?

世界の多くの消防局では、予防査察時に火災防御計画を作成するための情報収集を行っています。これには自衛消防隊の活動も含まれます。

倉庫併設型大型家具店に限らず、大規模建物の内容物がどのような可燃物で、燃焼によりどのような有毒ガスや物質、熱を発生するのか?また、熱による構造部材や箇所の変化による倒壊などの危険予測、空気呼吸器の呼吸法や残圧管理、進入・救出・退出訓練は、隊員の命を守る訓練でも有り、また、要救助者の救命率を高める訓練でもあります。

全米消防長協会(http://iafc.org)は、殉職事故などが起きた後の事後研究ではなく、サイズアップやディープダウンの危険予測手法を使って事前研究を行い、関係企業からの協力の元、事前研究資料の開示やデジタルアーカイブ化を行っています。

殉職事故が起こってからではなく、起こる前に予防することにもっと本気で調査・教育・研究・訓練を行い、予算、時間、労力を活かすべきだと心から思います。

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp






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