<直言!日本と世界の未来>中国・日本を貿易赤字の元凶視するトランプ氏の「認識ギャップ」=米の企業と消費者に跳ね返る?―立石信雄オムロン元会長

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かつて日本の大幅貿易黒字を背景とした経済摩擦問題が厳しかった頃。各国財界人による国際会議に度々出席したが、個人的にも親しくつきあっていて、常日ごろ日本と日本企業を礼賛していた外国人経営者が、経営者団体の一員として話すとひょう変してしまい、何とも嫌な思いをすることがあった。

輸入促進のため、政府も税での優遇制度を設け、ジェトロ(日本貿易振興会)も対日輸入・投資促進の手助けをしていた。経済団体でも輸入促進ミツションを数多く送り出し、民間企業でも多くのパートナーと共同研究開発プロジェクトを推進した。

残念なことは、会合に出席している外国人経営者のほとんどがこれらの日本の努力を知らない。あるいは知ろうとしないで、対日貿易収支の赤字の大きさだけで感情的になっていることであった。

また、困ったことには、対米のみならず、先進諸国向けの日本の製造業の輸出が先進諸国の経済や、産業構造の中に組み込まれてしまっている事実を理解していないことであった。

日米間をとってみても米国企業の商標の下に米国で販売される消費者向け商品、米国の製造業者が自社製品の一部として使用する部品および機器、米国の製造業者が生産のために使用する製造設備と、在日米国企業からの輸出など米国産業にとって不可欠な製品の輸出が多い。米国の経営者はこういう事実の認識に乏しかったようだ。

過去の流れの中で、世界的な産業の分業体制がそれなりにできつつあり、現在は競争力格差があり、しかも為替に左右されるだけに、輸入拡大もそう短兵急には難しい。とすればいっそのこと、いったん現状を是認し、その上で新しい世界的な規模での産業構造の調整を進めることの方が大切に思われてならない。

当時、パーセプションギャップ(認識の違い)や事実誤認がもとで“日本たたき”が行われた。今「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領は対外貿易赤字の元凶として中国をやり玉に挙げ、日本にも疑いの目を向けている。今もトランプ氏とその支持者たちはその“残影”にこだわっているのではなかろうか。

米国にとって最大の貿易赤字対象国・中国との間でも、アップル、IBM、GE、GM、フォード、ウォルマート、ナイキなどメーカーや流通会社が中国で生産したものを逆輸入している。構造的に組み込まれており、これら多国籍企業が一方的な規制に反対していると聞く。外国からの製品や原材料に高関税をかけ輸入規制すれば、食料、衣料品など生活物資が急騰し、国民生活に打撃を与えるのは論を待たない。

為政者はただ単に感情のみで判断せず、何ごとに対しても、「何が善か悪か」「何がその国にとってプラスかマイナスか」を冷静に精査し分析した上で、最終判断してもらいたい。
<直言篇21>

立石信雄(たていし・しのぶお)
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。






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