7 教育 「競争力」改革 学校でも – 北海道新聞

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 教育基本法改正、道徳の教科化、大学入試改革―。安倍晋三首相は第1次政権を含め2千日を超える在任期間中、トップダウンの手法で、教育への国の関与や「競争力」の強化に向けた改革を次々と打ち出してきた。一方で、現場では教員の負担や教育格差が問題化している。首相は今回の衆院選で、消費増税による教育無償化を目玉公約の一つに掲げたが、その実効性を巡っても論議を呼びそうだ。(東京報道 長谷川善威、中沢弘一、木津谷学)

■教科書検定 強まる統制

 首相は、第1次政権で約60年ぶりに「教育の憲法」と言われる教育基本法を改正した。2012年の政権復帰後は、教科書検定を「政府見解に基づく」内容に改め、小学校での英語導入、大学入試改革など次々と持論を実現させた。

 そのスピードを後押ししてきたのは、首相直属の有識者会議だ。「規範意識と競争力向上」を目指した教育再生実行会議や、教育無償化など「人づくり革命」を議論する人生100年時代構想会議を相次ぎ発足。自民党や文部科学省が主導する従来の形ではなく、トップダウンで政策を推進してきた。

 こうした改革が学力向上に一定の寄与をしたのは事実だ。全国学力テストの一斉実施により、成績下位の自治体が学習内容を定着させる「振り返り活動」などの対策を実施。北海道も全国平均を下回るが、差は縮めた。経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)では、日本の高校1年生が世界トップレベルの成績を保ち、首相は「やればできる」と自賛してみせた。

 ただ、改革の陰で教育現場の過重労働は深刻化している。16年度の教員の勤務実態調査では、過労死の目安とされる月80時間超の残業を行っていたのは小学校で3割を超え、中学校では6割近くに上った。いじめ対策のほか、学習指導要領の改訂で教える項目の増加などで、教員の業務量が増えていることが一因だ。文科省は教員増や外部指導員導入による分業化を目指すが、財源の見通しは立っていない。

 国による教育現場への過度な介入も目立つ。首相は15年4月、国立大の入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱について「税金で賄われており、正しく実施されるべきではないか」と発言。憲法が保障する学問の自由や大学の自治への侵害だとして批判を浴びた。

 教科書検定の改訂でも国の統制が強まり、教育現場には忖度(そんたく)と画一化が広まった。教科書会社は政府見解に沿うために尖閣諸島など領土に関する記述を大幅に増やす一方、日本の戦争責任についての記述を削減。小学校の道徳教材では、文科省から「伝統文化・郷土愛に触れていない」との指摘を受け、登場する「パン屋」が「和菓子屋」に変わるなど波紋を広げた。

 教育への国の関与は強まっているものの、OECD加盟国の国内総生産(GDP)に占める教育への公的支出の割合は、14年に日本は34カ国中最低の3・2%にとどまった。その分、教育にかかる負担は各家庭にのしかかるが、日本は標準的な収入の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」が13・9%(15年時点)と、先進国の中で高い。教育機会が各家庭の経済状況に左右される格差の問題が浮き彫りとなっている。

 前回衆院選で自民党は幼児教育の無償化や大学進学時の返還不要な給付型奨学金の創設を公約に掲げたが、財源の壁から部分的にしか実現していない。今回、首相が消費税を10%に引き上げる際の増収分の使途を、国の借金返済から幼児教育無償化などに変更する方針を打ち出したのは、打開のための一手と言える。

 しかし幼児教育の一律無償化は、裕福な人がその分を別の習い事の教育費に充てたりして、さらなる格差につながる可能性もある。増収分の使途の変更で国の財政健全化が遅れれば、子どもたちの将来に借金を積み残すことにもなる。

 教育無償化について、首相はこれまで自衛隊の明記と並び憲法改正に向けた検討項目の一つとして語ってきた。消費税増税分を財源に充てる政策も首相のトップダウンで、政府や党内で十分な議論は尽くされたとは言い難い。どこまで格差是正につながるのか見通せないのが実情だ。(おわり)






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