岩崎有一のひと握りのアフリカ~穏やかなニジェール川の旅(マリ)(アジアプレス・ネットワーク)

Home » 媒体 » アジアプレス・ネットワーク » 岩崎有一のひと握りのアフリカ~穏やかなニジェール川の旅(マリ)(アジアプレス・ネットワーク)
アジアプレス・ネットワーク, 中東・アフリカ コメントはまだありません



2016年2月、私は、アフリカ西部の内陸国マリ中部の町モプティから客船に乗り、北を目指した。一等寝室・二等室ともに満席だ。船倉には雑穀とコメが隙間なく詰め込まれている。船室から屋根にかけては、水入りペットボトル、缶詰、鍋、竹かご、生野菜、自転車、自動車用オイル、ジャガイモ、炭、鶏、反物、バイク、ヤギなど、あらゆる生活物資がびっしりと積まれていた。人と荷の塊となった船は、ゆっくりとモプティの岸辺を離れ、ニジェール川を進み始めた。

南北にかけてひょうたん型に国土が広がるマリでは、2012年から現在まで、武力闘争が続いている。同国北部の自治拡大・分離独立を求める現地勢力に加え、リビアのカダフィ政権崩壊に伴い武器とともに流入した外国人勢力や、AQIM(イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ)と共闘する勢力など、複数の出自の異なる勢力が、マリ政府に対し散発的に攻撃を繰り返してきた。
そのため、北部での移動は、現地の人々にとっても難しいものとなってしまっていた。私も現地の人々に倣い、水路を選んだ。

かつては外国人も多く訪ねた地域だが、今はMINUSMA(国連マリ多面的統合安定化ミッション)関係者以外に外国人を見ることは稀だ。船内は無論、船外に出ても、ひときわ目立つ私に向けて、あちこちから視線が刺さってくる。
ただ、彼らの視線は、刺さりはするものの、痛いものではない。すれ違う船上の人々と目が合えば、こちらに向けてゆっくりと手をあげてくれる。船内で私の挙動をうかがっていた乗客も、やがて、バナナや落花生を黙って手渡し、お茶を振る舞ってくれた。夜には互いに、世界情勢談義に花を咲かせもした。

ニジェール川は、平穏だった。
網を投げて魚をとる漁師を乗せた丸木舟や、木材を運ぶ運搬船、そして、私が乗船したような客船など、ニジェール川の船の往来は絶え間なく続く。船上の人々は、スマートフォンを見つめたり、沸かしたお茶をすすったり、食事をほおばっていたり。すれ違う船のそれぞれの船上に、マリの人々の日常を見た。ゆったりと流れるニジェール川と、その川面と両岸に広がる人々の暮らしを見ていると、スマホを除けば、この風景はきっと、数百年前と何も変わっていないのだろうと感じられてくる。
「マリ北部の状況を、自分の目で確かめてきてください。あなたに神のご加護を。」
乗客からかけられた声に静かに奮いたち、私は目的地のヤフンケで船を降りた。

野生動物が草を食む光景も、紛争地の惨状も、新進のビジネスに沸く状況も、祭りで音楽を奏でる様子も、アフリカを構成する幾千もの風景の一部分にすぎない。とかくひと括りに語られがちだが、アフリカは実に多様だ。東西にも南北にも8000kmにわたるアフリカ地域を、総(す)べて語ることは難しい。
しかしまた、そんなひと握りのアフリカの風景をいくつも重ね合わせていけば、アフリカの全体像に近づくことができるはずだと、私は思っている。
 
アジアプレス・ネットワークでの「ひと握りのアフリカ」、再開します。(岩崎有一)

<岩崎有一/ジャーナリスト>
アフリカ地域に暮らす人々のなにげない日常と声と、その社会背景を伝えたく、現地に足を運び続けている。1995年以来、アフリカ全地域にわたる26カ国を訪ねた。近年の取材テーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」など。Keynotersにて連続公開講座「新アフリカ概論」を毎月開催中。2005年より武蔵大学メディア社会学科非常勤講師。
HP: http://iwachon.jp
facebook: iwasaki.yuichi.7
twitter: @iwachon

【関連記事】



コメントを残す