(朝鮮日報日本語版) 【社説】寄生虫感染、北の実情を知られたくない韓国の左派陣営(朝鮮日報日本語版)

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 今月13日に1人の北朝鮮兵士が板門店の共同警備区域(JSA)を通じて韓国に亡命したが、その脱走のプロセスは文字通り自由を求める軌跡の大脱走だった。国連軍司令部が昨日公開した監視カメラ映像と熱像感知装置(TOD)映像をみると、兵士を追撃していた北朝鮮の警備兵らは、手を伸ばせば届きそうな至近距離から仲間の背中を銃撃していた。兵士が軍事境界線(MDL)を通り過ぎ韓国側に完全に入った後も銃撃は続いた。その際、北朝鮮警備兵1人が軍事境界線を越えていたこともわかった。兵士が倒れた後もその命を奪うための銃撃は続いた。兵士が死なずに命をつないだことはまさに奇跡だ。映画でもこれ以上劇的な場面はないだろう。

 ところがこの脱走劇後、韓国社会では考えられない事態が起こっている。革新系の少数野党「正義党」の金鍾大(キム・ジョンデ)議員が、兵士の治療を行い命を救出した亜州大学病院の李国鍾(イ・グクジョン)教授に対し「人格テロ」などと非難しているのだ。李教授は兵士の体内から大量の寄生虫を発見し、兵士の食べ物がわずかなトウモロコシの粒だけだった事実を公表したが、これについて金議員は「プライバシーの侵害」「医療法違反」などとして問題視したのだ。

 正義党はこれまで北朝鮮の人権問題はもちろん、現地住民にとって地獄のような現地の実態に特別な関心を示したことはなく、北朝鮮人権法の成立にも反対した。ところが今回北朝鮮から命がけで逃げてきた兵士の体内の状況から、北朝鮮における悲惨な実態が改めて伝えられると、北朝鮮の人権問題に何ら関心を示さなかったこの政党の議員が突然「人権」という言葉を持ち出して反発したのだ。民主社会であれば様々な考えを持った人がいて当然だが、それでも李議員の発言には驚かされる。

 現時点で兵士の人権を最大限守ることがあるとすれば、それは脱出が成功するに至ったプロセスを正確に記録として残し、その生命を守ることだ。そう考えると兵士を救出した人たちに敬意を表することがむしろ当然であり、非難することなど普通は考えられない。また兵士を治療する過程で北朝鮮の実情がわかれば、それは北朝鮮の住民全体にとっての問題であり、統一後はわれわれの問題になる。そのためこの問題は誰もが知っておくべきであり、絶対に隠すべきではない。

 ソウル大学医学部の統一医学センターが北朝鮮の金剛山近くの村で寄生虫感染の実態を調べたところ、住民の95%が寄生虫に感染していたという。北朝鮮では人糞が肥料として使われており、また駆虫薬も足りず衛生状態が最悪の状況にあるからだ。板門店などにいる警備兵は北朝鮮でも出身成分が非常に良く、いわばエリートに属するはずだが、その彼らもトウモロコシで何とか命をつないでいるという事実こそ、まさに北朝鮮の食糧事情を物語るものだ。正義党も金議員も本当に人権を重視しているのなら、命がけで韓国に逃げてきた兵士の体内にあった寄生虫やトウモロコシを見て、北朝鮮政権の失敗や住民への弾圧を告発すべきではないのか。

 韓国の左派陣営は国内の人権がからむ問題には過剰に反応し積極的に動くが、北朝鮮住民の人権問題には不思議と顔を背け何も語ろうとしない。かつて盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も5年の任期中に行われた国連での北朝鮮人権決議案の採決に不参加、棄権、棄権、賛成、棄権という対応を取った。2006年だけは賛成したが、これは北朝鮮が最初の核実験を強行したため、国際社会の雰囲気を無視することができなかったからだ。左派陣営は05年に韓国の国会に提出された北朝鮮人権法についても11年にわたり採決を妨害し、成立に至ったのは昨年になってからだった。しかし北朝鮮人権財団の立ち上げには今なお強く反対している。そう考えると正義党の金議員が李教授を非難した本当の理由は兵士の人権に配慮するためではなく、それによって北朝鮮の実情が知られたくなかったからだ。本当に嘆かわしいことだ。

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