米国が目指す対北有志連合の形成 ティラーソン氏、各国に「海上臨検」の実施呼びかけ(夕刊フジ)

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 【ニュースの核心】

 朝鮮半島が一段と緊迫している。北朝鮮は11月29日、米国の圧力をあざ笑うかのように、またICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15」を発射した。これから事態はどう進展していくのか。

 今回の発射について、専門家の間には「まだ弾頭の大気圏再突入技術が検証されていない」とか、「重い弾頭を搭載すれば射程距離は短くなる」といった指摘もある。

 その通りだろう。今回の実験はミサイルを上空に打ち上げ落下させただけで、弾頭を大気圏から斜めに再突入させたわけではない。そうだとしても、北朝鮮のミサイル技術が進歩しているのは確実である。

 開発をあきらめない金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の意思も改めて明白になった。となると、米国に残された手は何か。

 まず、対北圧力のギアをさらに一段上げる。実際、レックス・ティラーソン国務長官は、各国に海上臨検の実施を呼びかけた。

 海上臨検とは、北朝鮮に出入りする輸送船を軍艦が実力で阻止し、武装チームが船に乗り込んで積み荷を調べる措置だ。相手が停船を拒否したり、検査に抵抗すれば武力行使もあり得る。

 米国は9月の国連安全保障理事会で「武力行使も容認する海上臨検の実施」を提案した。だが合意できず、積み荷に禁輸品の疑いがあれば各国に検査を要請する妥協策でお茶を濁した経緯がある。

 今回、米国が安保理とは別に、海上臨検を各国に呼びかけた点に注目すべきだ。これは将来の武力行使も視野に入れて、「有志連合の形成」を目指しているのではないか。

 1962年のキューバ危機では、当時のケネディ政権が海上臨検を発動して、キューバに向かうソ連のミサイル輸送船団を実力阻止しようとした。ソ連船団は直前で引き返したため、大事には至らなかった。だが、ソ連が強行突破を図っていたら米ソが海上で衝突し、それを機に本当の戦争になった可能性が高い。

 今回も同じだ。もしも海上臨検が実施されれば、本格的な軍事攻撃への「仕掛け花火」になるのではないか。日本も海上臨検への参加を求められるかもしれない。

 中国が、北朝鮮に派遣した「特使」の工作は失敗した。それを確認してドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定し、直後にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談した。ロシアを積極的に北朝鮮包囲網に加えようという狙いである。

 だが、これに多くは期待できない。

 プーチン氏が北朝鮮に同情的であるのに加えて、クリミア問題や米大統領選介入疑惑で、米議会のロシア批判が強いからだ。

 トランプ氏が、プーチン氏の説得に対ロ制裁緩和を持ち出そうにも、議会が応じそうにない。議会には反トランプ機運も強い。米政府担当者は私に「議会の説得はかなり難しい」と語った。

 結局、トランプ政権の外交努力は手詰まり感が強まっている。

 ティラーソン国務長官の去就も取り沙汰されるなか、年明け以降、軍事的緊張が増すのは確実だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。東京新聞論説委員。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。






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