コラム:金正恩氏、南北対話に透けて見える「下心」 – ロイター

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 1月10日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(写真)が新年早々、外交面で攻勢に転じている。とはいえ、それは同国の戦略転換を意味しているわけではない。写真は2017年12月、平壌で撮影。KCNA提供(2018年 ロイター)

[10日 ロイター] – 予想上回るペースで進行した北朝鮮の核ミサイル開発、ライバルに対する苛酷な弾圧、そして猛毒の神経剤を使った異母弟の暗殺容疑によって、金正恩・朝鮮労働党委員長は昨年、世界を震撼させた。

その正恩氏が新年早々、外交面で攻勢に転じている。とはいえ、それは同国の戦略転換を意味しているわけではない。

北朝鮮と韓国の当局者による南北会談が9日、2年ぶりに行われ、韓国で2月に開催される平昌冬季五輪に北朝鮮が代表団を派遣することや、両国の軍当局者による対話の実施について合意された。

もちろん対話に前向きな姿勢は、比較的ポジティブな兆候だ。しかし、だからと言って北朝鮮に、これまで以上に強力な、特に米国本土に対する攻撃能力を備えた核ミサイル・弾頭を開発する動きをペースダウンしようとする意志があるわけではない。

むしろ北朝鮮政権が推進しているのは、米韓にクサビを打ちこもうとする意図的な戦略であり、それに成功を収めつつあるようにみえる。

こうした動きは、トランプ米政権の立場を複雑なものにする。金正恩体制に対する米国の直接的な軍事行動は、潜在的に不可能とは言わないまでも、さらに難しくなるだろう。

米韓両国は長年にわたる同盟国であり、公式の相互防衛条約は1953年の朝鮮戦争休戦時にまでさかのぼる。韓国での米軍駐留を維持することは、韓国の生存のためには不可欠だと考えられている。だがその一方で、米韓にとっての優先順位には食い違いが見られる。

米政府、特にトランプ政権は、北朝鮮が米本土を攻撃する能力獲得を阻止することが最重要目標だ、と明言している。対照的に 韓国は対照的に、すでに北朝鮮による大量の通常兵器、核兵器、そして恐らく化学・生物兵器による攻撃の射程圏内にある。

したがって、米政府内には、将来的な米本土に対する脅威を回避するために、戦争リスクも辞さない、あるいはむしろ戦争を積極的に選ぼうとする向きがあるかもしれないが、韓国政府はそのような危険な戦略を好まない。

韓国の交渉担当者は、もっぱら米国の要請に基づいて、外交上のオファーの重要な柱として、朝鮮半島の「非核化」を掲げた。北朝鮮側は交渉の議題として取り上げることを拒否した。ただし北朝鮮の交渉担当トップは、同国が保有する核兵器は米国だけを対象としたものであり、韓国の「同胞」に向けられたものではない、と断言している。

実際、北朝鮮が米韓のあいだに大きな亀裂を入れようと、どんなに頑張ったとしても、そこには高い壁がある。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、同国の歴代大統領に比べ、北朝鮮との関係見直しに前向きかもしれないが、韓国は依然として国防面では駐韓米軍に大きく依存しており、それ以上の米国からの武器購入に頼る部分は大きい。

韓国が現在、外交的解決に熱心な理由の1つとして、北朝鮮がテロやサイバー攻撃によって平昌冬季五輪を混乱させるのではないかという懸念があり、大会開催期間中の妨害や事件を避けようとしているのではないか、と一部のアナリストは勘ぐっている。

五輪閉幕後も南北関係が良好であり続ける保証はどこにもない。

少なくとも、米韓合同軍事演習は五輪閉幕後に再開される可能性が高い。軍司令官らは、将来あり得る攻撃に対して、米韓そして日本の備えを維持するには、合同軍事演習が不可欠だと考えている。

 1月10日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(写真)が新年早々、外交面で攻勢に転じている。とはいえ、それは同国の戦略転換を意味しているわけではない。写真は9日、2015年12月以来となる正式な南北会談を行った韓国と北朝鮮の政府高官。代表撮影(2018年 ロイター)

米国がこの1年間こだわり続けてきた軍事力による強気の威嚇、特に北朝鮮の核施設に対する攻撃能力の誇示を狙った米単独の空軍演習を減らしてほしいと、韓国が望んでいるとしても不思議はない。

とはいえ、例えば国境地域における複数の経済特区の再開など、北朝鮮との緊密な経済関係を復活させる方向で韓国が説得された場合、米国政府としては喜べないだろう。核の野望をスローダウンするよう説得する米国の戦略は、北朝鮮の経済的孤立に強く依存しているからだ。

だがその戦略も、すでに幅広い問題に直面してきている。

中国は、自らが正恩氏の行動に苛立ちを強めていることもあり、おおむね国連制裁に従っているが、プーチン大統領率いるロシアは、北朝鮮政府にとっての命綱としての存在感をますます強めている。

実際のところ、韓国にとっての第1目標は、今なお、一方的な行動をとらないよう米国を説得することだ。

 1月10日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(写真)が新年早々、外交面で攻勢に転じている。とはいえ、それは同国の戦略転換を意味しているわけではない。写真は2017年12月、韓国で行われた米韓両軍による共同軍事演習の様子(2018年 ロイター
/Kim Hong-Ji)

トランプ大統領は昨年のソウル訪問で非武装地帯を訪れることができなかったが、韓国政府当局者は、同大統領の搭乗するヘリの機上から、ソウルが南北軍事境界線からわずか35マイル(約56キロ)しか離れていないことをトランプ氏に見せることを忘れなかった。

ソウルは北朝鮮砲兵部隊の射程圏内にあり、たとえ核兵器が使われなかったとしても、韓国側の犠牲者は1日最大2万人に達する可能性がある、と米国防総省は警告している。それならば、韓国がトランプ大統領に、再び戦争の引き金を引くようなリスクを冒すべきではないことを示したいと願ったのも無理はない。

米韓両政府が、北朝鮮に核開発計画を放棄させるための政治的手段を模索しているのは明らかだ。昨年訪韓した際、トランプ氏は文大統領に対し、朝鮮半島の再統一、つまり金正恩体制の崩壊という希望を捨てるよう韓国内を説得できるかを尋ねたと伝えられている。

その可能性は低い、と韓国政府当局者はみている。

近い将来に朝鮮半島の再統一が可能だと考える人はほとんどいないものの、韓国は依然として、それを政治目標として掲げている。北朝鮮も「再統一」という題目を掲げているが、それが起こるとすれば、金正恩体制の下で、恐らく軍事的な征服の結果として生じる場合だけだと、多くのアナリストは考えている。

これが、韓国が米国との同盟関係から大きく逸脱する可能性が低いとみられている理由の1つだ。実際、多くの韓国アナリストが強く懸念しているのは、米国が在韓米軍を撤退、あるいは自国にする核攻撃を恐れて北朝鮮の仕掛ける紛争を座視することにより、韓国を無防備な状態にさらすことである。

外交面で今週、南北の歩み寄りがみられたことによって、北朝鮮がサイバー攻撃や、もっとひどい手段によって冬季五輪を妨害するリスクはほぼ確実に低下した。この融和によって、正恩氏自身も、今後数カ月は核実験ペースを低下させようという気になった可能性もある。とはいえ、これにより根本的な問題は何一つ解決されていないのだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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